関西大学ラグビー開幕

2025年の大学ラグビーシーズンがいよいよ開幕しました。ここまで積み重ねてきたトレーニングの成果を試す時がやってきたと感じています。
ラグビーはスピード、スキル、戦術理解と多くの要素を必要としますが、相手との激しいぶつかり合いが避けられない“コリジョンスポーツ”において、フィジカル(身体的な強さ)は欠かすことができません。
私たちは2月から6月にかけて、徹底的にフィジカル強化に取り組んできました。途中、部員2名の不祥事によって活動自粛を余儀なくされましたが、その期間でも選手たちは各自でトレーニングを続けてくれました。その姿勢こそが、一段と大きな成長につながったと思います。
正直に言えば、7月のフィットネス強化期間にチームで練習できなかったことは大きな痛手でした。しかし、選手たちの体づくりを最優先に考え、トレーニング計画はあえてフィジカルに重きを置きました。
ラグビーパフォーマンスコーチとして重視したポイント
・ウエイトトレーニングのピリオダイゼーション
・スピードチェンジ
・グランドフィジカルトレーニング

フィジカルを向上するには
ラグビー選手のフィジカル強化には様々な考え方がありますが、ここでは私自身の「原点」とも言える考え方をお伝えします。
それが、常に周囲にも話している「土方のおっさん理論」です。
圧倒的な“量”の積み重ねがすべての基礎
この理論を一言で言えば、「毎日、圧倒的な量を継続することが最も重要」ということです。
最近ではSNSでも似たようなことが言われるようになりましたが、私はこれを昔から実践してきました。ようやく最近になって、それを言語化できるようになってきた、というのが正直なところです。
まずは、うんちくよりも行動。これがすべてのスタートです。
やる前から「理不尽だ」と感じるようでは、本物にはなれません。目の前のことに全力で取り組む──その積み重ねこそが、真の成長をもたらすと信じています。

よくある指導者からの質問
これまで多くの指導者から、次のような質問を受けてきました。
- どんな取り組みをしているのですか?
- スケジュールはどう組んでいますか?
- よく鍛えられていますが、どうやってるんですか?
その答えは、いつも同じです。
「習慣化を意識しているだけです」
特別なことをしているわけではなく、日々の積み重ねと、空気感=トレーニング環境の雰囲気をとても大切にしています。
「何してるの?」と聞かれれば、シンプルなトレーニングをコツコツ続けているだけ。でもそれを当たり前のようにやり続けることこそが難しく、だからこそ意味があります。
トレーニングの計画と意識しているポイント
トレーニングのピリオダイゼーション(期分け)は、これまでの経験を活かして設計しています。
特に意識しているのは次の3つです。
- ジムでのウエイトセッションの負荷管理
- ランニングボリューム(走行距離や強度)の調整
- シーズン序盤における強化期間のボリューム設計
試合にばかり意識が向くと、シーズンの後半に失速してしまう選手が多くなります。だからこそ、シーズン中も強化は止めてはいけません。
下図は、開幕戦の週にある選手が記録したGPSデータです。
データは「読み解いてこそ」価値がある
GPSや各種モニタリングデータは、「どう活かすか」がすべてです。
ただ取るだけで分析・活用しないのであれば、正直、**手間がかかるだけの“自己満足”**になってしまいます。
しかも、今回紹介しているのは開幕週の1週間分のデータです。これだけを見ても「フムフム、そうだね」で終わってしまうかもしれません。
経験の蓄積が“気づき”を生む
重要なのは、日々の積み重ねと照らし合わせてデータを読み解くことです。
同じ数値でも、選手ごとの過去の傾向、状態、トレーニング背景を理解していなければ、本当の意味での「気づき」にはなりません。
だからこそ、指導者には「経験値」が不可欠です。
私自身、GPSデータと日々のトレーニングを5年以上、朝から晩までにらめっこしてきました。その蓄積があるからこそ、わずかなリスクの兆候にも気づくことができました。
実際にこのデータから、ある選手に**「このままでは怪我のリスクが高まる」と判断**。すぐに監督とコーチに相談し、試合途中での交代という判断をしていただきました。
「防げたケガ」が、最大の成果
結果的に、その選手には多少のダメージはありましたが、大きな怪我には至らず乗り越えることができました。
それだけでなく、私にとっても「またひとつ経験値を積み重ねられた」という意味で、大きな収穫になりました。
まとめ
最も重要なのは、熱量です。
熱量がなければ、探究心も芽生えず、継続もできません。
どれだけ理論や計画を並べても、「行動」が伴わなければ意味がないのです。
ここまで読んでいただければ分かるように、世の中には“方法論”ばかりに意識が向いて、実行が伴わないケースがあまりにも多い**のが現状です。
でも、まずは「やってみる」こと。
その一歩を踏み出すだけで、あなたが今いるリーグの中で一歩リードできる存在になれるはずです。