本当に必要なフィットネスメニューの作り方

「フィットネステストが速い=試合で走れる」ではない?
あなたのチームでは、フィットネス測定をどう活用していますか?
ラグビー界でよく使われるフィットネステストといえば、「1000m走」「Broncoテスト」「YO-YOテスト」の3つが有名です。もちろん、これらは体力の基準や比較として有用ですが、実はそれだけに頼るのは非常に危険です。
実戦の中で発揮される“ゲームフィットネス”とは、「必要なタイミングで繰り返し加速ができる能力」です。
では、どうすればその“ゲームフィットネス”を高めることができるのでしょうか?
実戦では「加速の繰り返し」が求められる
実際のラグビーの試合をこれまでのゲーム分析で見てみると、以下のような傾向があります。
- Ball in Play(BIP):平均30〜60秒
- 次のプレーまでのインターバル:平均60〜90秒
- 試合中の全力疾走の割合:全体の10〜20%程度
つまり、ラグビーのフィットネスとは「30秒間で何回加速し、インターバルでどれだけ回復できるか」という“断続的な爆発力”に近いのです。
それなのに、多くのチームでは3大フィットネステストのみで短絡的に評価してしまうケースがあります。
たしかに、これらのテストは一定の指標になりますが、加速力の低い選手だけど我慢強く動き続けるタイプの選手が不利になる傾向もあります。
「我慢強さ」も評価される時代に
日本のラグビー事情を見てみると、野球やサッカーが人気なこともあり、運動能力が高い若者はそちらに流れる傾向があります。そのため、ラグビーには
- 身長175cm未満
- スプリントが得意ではない
- 根性があって我慢強い
そんな選手が多く集まる傾向があります。特にFWにはこのタイプが多く、間欠的な持久力に優れた選手も少なくありません。
YO-YOテストやBroncoではこうした選手はスコアが伸びにくいですが、試合では重要な役割を果たしていることが多いのです。
だからこそ、GPSや映像分析から「どのタイミングで加速し、どれだけ反復できているか」を見る視点が重要になります。
GPSデータを活用したメニュー設計の実践法
では、GPSデータをどう活用すれば、「本当に必要なフィットネス」が見えてくるのでしょうか?
✅ ステップ1:実際の走行・加速データをチェック
- 1試合あたりの加速回数・減速回数
- トップスピードゾーンへの到達回数
- 走行距離のうち、高強度移動の割合
✅ ステップ2:ポジション別に動きの特性を把握
- FWは「衝突→再活動→再関与」
- BKは「スプリント→衝突orフォロー→再関与」
✅ ステップ3:ゲームに近いフィットネスドリルを設計
- 30秒間の高強度シャトル+90秒レストの反復
- ボールを使った「加速→接点→再配置」ドリル
- アジリティ+加速+判断を組み合わせた状況設定
こうしたゲーム構造を模倣したトレーニングを通じて、「ゲームフィットネス」を高めていくことができます。
まとめ:今日からできる一歩とメッセージ
フィットネステストのスコアに一喜一憂するのではなく、「試合で何が求められているか」に目を向けましょう。
BroncoやYO-YOはあくまで“基準”。それをどう捉え、どう活かすかが指導者や選手の力量です。
GPSや映像を活用し、
「必要な場面で確実に動ける選手」を育てる
これこそが、これからのラグビーのフィットネスづくりに求められる視点です。